わにの日々-海が好き!編

NY、DC、テキサス、コロラドを経て、大都会ロサンゼルスから、その郊外の海辺の街、レドンドビーチに移り住んだ、ぐうたら中年主婦・わにのトホホな日々

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「二つの祖国」 Too Close to Home

 先週、手に入れた、山崎豊子氏の「二つの祖国」、やっと読み終えました。同じ作者の、やはり二つの祖国の間で引き裂かれる人間をテーマにした作品、「大地の子」は、雑誌連載時に飛び飛びで読んでいたので、文庫本化後に、まとめて読んだのですが、読み終えた時には、うむ、手応えのある小説を読んだなぁ、という満足感を感じました。この「二つの祖国にも、同じような読後感を期待して読み始めたのですが、読み終えた時は、「はぁ、やっと終わった」的な安堵と、うやむやした暗澹とした想い、そして、どこかはぐらかされたような「??」な気持ち(これに関しては、後で説明します)で、どっと疲れちゃった。

 「華麗なる一族」と、「白い巨塔」は、TVドラマの原作として楽しく読んだ覚えがあるし、父方の実家が船場なので、「ぼんち」も面白かったのですが、「二つの祖国」は、小説としては、主人公が立派な人物過ぎ、主人公の奥さん悪妻過ぎ、ヒロイン理想の女性過ぎ、と、いま一つご都合主義過ぎるんじゃないかって気がするし、それゆえに肩入れできるキャラクターもいない。途中で、移民の苦労話から極東軍事裁判へと、全く別の物語になってしまうのも、この小説に「疲れた」理由かもしれません。なんか、作者、途中で書くきたいものが日系人の苦労から東京裁判そのものに変わったんだけど、無理矢理、苦労話をくっつけて辻褄合わせてる、みたいな。でも、そう感じたのは、自分がロサンゼルスに住んでいることや、実際にマンザナール収容所跡を見学したばかりであること、そして、翻訳業を営んでいることなどあって、内容が余りに身近すぎて、さらりと読み流せず、そういった部分に固執して、東京裁判の部分に肩透かしを食らったような気になった所為かもしれません。

 なにしろ、舞台が日本に移る前の上巻部分では、あの荒涼としたマンザナールの光景や、資料館で実際に目にした品々、フィルムを通じてた元抑留者の声が、文章を通して生々しく蘇りましたし、ソーテル、リトル・トーキョーといった馴染みある地名も現実味を引き起しました。最終巻での、外見上は広島で浴びた放射線の影響を受けなかったのように見えたヒロイン椰子の死も、父が長崎で被爆した私には、不気味に迫ってきました。

 ですが、中巻以降、テーマは極東軍事裁判に移ってからは、主人公の葛藤がオマケになってしまっているように思えます。通訳者・裁判モニターとしての疲弊も、「うん、判るなぁ」と、思うのに、主人公自身に感情移入できない。自分が翻訳をしていて、本当に正確に伝わったかどうか、と納品してからもウジウジしたり、内容によって良心の呵責に悩まされることがあるので、主人公の通訳者としての胃の痛い思いも判るのに、それでも二つの祖国の板挟みとなる主人公の苦悩に対しては、アンタは真面目すぎて青いよ、って覚めた見方になっちゃう。そこへ、ありえないほどワガママな主人公の妻が出て来るに至っては、もう冗談かと思うほど。

 主人公の最後の行動も、親思い、子思いであったはずの主人公が、結局は己に負けた身勝手な行動であり、恋人に死なれ、尽くしたアメリカにも結局は疑われて、ヤケになった上の自爆としか思えませんでした。が、この主人公にはモデルがおり、そのモデルとなった人物、伊丹明氏の実際に取った行動をなぞっているので、この結末は、当然の帰着といえば、当然なのかもしれません。最終的に、自殺という日本的な最後を選んだ主人公は、結局は日本人だった、って意味なのかなぁ?でも、そこは小説なんだから、この苦悩を乗り越え、二つの祖国の架け橋となるべく信念を貫く、という姿勢を見せてくれれば、共感したかも、と、少し残念です。しかも、主人公は自殺、ヒロインは死亡、主人公の弟は日本に残り、辛酸を舐めアメリカで大成する野望を抱いていたチャーリー田宮も日本の上流社会に取り入るところでお話が終わるので、戦争を経ての日本とアメリカの祖国の架け橋となる二世たちが一人もいないまま、一方の戦後ロサンゼルスでは、Life goes on、で、終わるのも、この小説の主題って何だっけ?なあっけなさが残りました。

 ところで、東京裁判の場面は、きっと資料を基に実際の証言が描写されているのではないかと思うのですが、それ故に迫真に迫る場面もあり、別の読み物として、戦犯と呼ばれた男達と、その家族模様を読み進めるという楽しみもありました。ところで、ここでも書かれる、日本大使館が真珠湾攻撃前の宣戦布告書を出すのを遅れたって話、やっぱ本当なのかなぁ?だとしたら、余りに間抜けな上、大きすぎる過失で、やるせないんですが。なんか、今でもD.C.の日本大使館では、これを苦悩して自決した大使館員の幽霊が出るってきいたことあるけど、これもホント?

 ともあれ、最後まで誇りを持って死に挑んだ、東条初め、最後まで毅然とした態度を崩さなかった7人の死刑囚には、感銘を覚えました。でも、東郷茂徳に関しては、主人公と同じ鹿児島出身ということで、下巻では大きな部分を占めて語られますが、孫がワシントンポスト紙でとんでも記事を書いたり、スカートめくりをして捕まったりなんてな為体って知ってたので、読みながら既にとほほ…orz

二つの祖国〈上〉 (新潮文庫)二つの祖国〈上〉 (新潮文庫)
(1986/11)
山崎 豊子

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 この「二つの祖国」、そして「大地の子」は山崎氏の戦争三部作のうちの二つなのだそうで、三冊目、「不毛地帯」も、読んでみなければ、と、思っています。また、古本屋さん行かなくちゃ!
  1. 2009/01/27(火) 21:16:12|
  2. 本と映画
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  4. | コメント:1
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  1. 2012/04/03(火) 04:51:28 |
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